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碧しの/U30 部下の嫁(2)  − 来訪 −

「性欲盛りなU30歳の部下の嫁に手を出した俺」 2015/07/23発売 アキノリ(DVD/配信)

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会社から帰宅し、課長夫人からの伝言をシノに伝える夫。シノは日頃世話になっている上司への謝意も含め、自宅への夕食招待を提案する。
夫も妻の発案に異存なく同意し、会食はいともあっさりと決定する。

過去に於けるマツモトとシノとの接触機会をこの場面を通じて推し量るならば、前述した検証・考察から、ここでシノが言及する「課長(マツモト)にはいつもご馳走してもらっている_」のは、夫のアオイのみであり、シノを伴う会食機会はほぼ皆無ということだろう。ここでの“ご馳走”とは、恐らくは夫が退勤後に仲間と立ち寄る酒席等を指すものであり、かねてより伝え聞いていた上司からの“施しの蓄積”を忘れない、シノの良妻ぶりを伝える台詞である。


場面は会食当日へと移り、シノが夕食の支度を開始するショットに変わる。人参を持つ手許がアップで映し出されるが、蛇口からの流水に通しながら、入念に繰り返される右手の抽送運動描写が殊のほか長いうえ、同ショットが次カットでは固定アングルのまま再度の“寄り”を以てさらにクローズアップされる。反復される執拗な強調表現によって、この“人参ショット”が意在言外として観る者に伝播する。
人参は言うまでもなく男性器の隠喩として提示されている。人参を洗うシノの手捌きは、深層意識下で彼女が渇求する男性器に対する愛撫そのものだが、今は差し迫る会食の準備に追われ、現前する人参が、それから連想される“代替たる異形”としては彼女の意識領域に顕れず、シノが過去に培ったであろう性戯としての技量を無自覚のまま人参の洗浄行為に発揮している。画面がシノを捉えた仰角のクローズアップに切り替わっても、人参を洗う彼女の表情は平静そのものであり、様子から姦邪な異心は微塵も感じられない。間もなくして後方を振り返り、会食準備の手助けを夫に乞う。

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人参を一心に洗うシノ 課長夫妻との会食の準備に追われる

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料理が食卓に揃ったタイミングでインターホンが鳴り、マツモト夫妻が到着する。
玄関に2人揃い、来客を笑顔で迎えるアオイ夫婦。


日時経過の設定により各人とも服装が替わっているが、ここでも女優に前述したような“場違い極まりない露出過多の服装”はさせておらず、場所柄を辨えた衣装選択がなされている。

碧しのの着用衣装に着目すると、黒のヴィシーチェック柄のブラウスに膝丈の白いフレアスカートといった装いである。控えめな色合いながらもブラウスはパール襟で、襟先には花模様のビジューがあしらわれており、さりげない装飾が慎ましさの中にもほのかな華やかさを演出する。夫はTシャツにジーンズという至って気軽な普段着姿で、先述した課長夫妻の服装と同様、両家の親交を感じさせる気安さである。シノは周囲との均衡を保ちつつ、普段着よりささやかにドレスアップした身拵えとしており、物語内に於ける彼女の楚々としたキャラクターをひときわ際だったものしている。

こうした衣裳への拘りは、本作品の監督「ティッシュマン」(作品クレジットより)氏の一貫したポリシーであるかとも思われたが、本作品「保坂えり篇」の客の来訪シーンで、彼女が不相応に短いスカート姿であったこと、またティッシュマン監督の他作品を視聴した感触では、必ずしも「出演女優の写実的見掛け」への執着は感じらず、本篇で見られたようなリアルなキャラクター造形が、同監督の作品製作に於ける慣行とはなっていないようだ。

 

この「碧しの篇」で特筆すべきは、本作品他篇ではいまひとつ不足している、物語佳境へ向かう過程で顕在化する「部下の妻」の性的欲望、“堕ち”と“覚醒”といった背徳的要素と服従的挙動が、物語序盤との明確な落差で迸発する様を描いている点にある。他篇では劇中の序盤早々に主演女優が裸身(視聴者に向けた)を晒すことも興冷ましであるうえ、偶発的かつ無自覚、という設定下ではあるものの、上司に対して反芻される「部下の妻」の挑発的行動(「保坂えり篇」:上司と対座した際にスカート奥を覗かれたうえ入浴も覗かれる 「大槻ひびき篇」:上司宅に泊まった部下夫婦が性交中を上司に覗かれる 「酒井あさひ篇」:来訪した上司をノーブラの部屋着姿で迎える)から、意図せず秋波を送る結果となり、やがて自らを崩落させることになる。「碧しの篇」にも冒頭部に女優の性的渇望描写として自慰シーンが設けられていて、それは大胆に脱衣することなく短く収められているが(本作品がオムニバス作品であるがゆえの短縮表現であろう)、ここも直接的な描写はむしろ省いてよく、AVとはいえ造り込まれたドラマ物であれば、ケースに依ってはセクシャルな場面を逐一詳述せぬ方が後の展開に効果的作用を及ぼすのではないだろうか。物語内で奇行とも言える軽率で挑発的な挙動を繰り返す浅薄なキャラクターの登場(それを企図・容認する演出)は、AVが陥りやすい極めて皮相的な術計であり、歪にデフォルメされた演出手法よって造作された、“無防備で嗜みを欠く愚鈍な主人公”は、物語上にあってたちまち在り処を失い、ひいては作品の“質”自体をも貶めることになる。

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地味ながら清楚感漂う女優(碧しの)の装い

マツモト夫人はテーブルに並んだシノの手料理を称賛し、マツモトは早々にアオイと酒を交わしながら目下の業務進捗を談議する。
夫人は料理に舌鼓を打ち、持参した手作り菓子をシノに手土産として差し出すと、妻同士は料理談義に花を咲かせる。

 

ここから2家族によるささやかな会食模様がしばし描出されてゆく。
4人が織りなす団欒の様子は、各人の対話が交錯して台詞も多く、演者の力量不足が祟ってアダルト作品では難度の高いシーンである。しかし、本篇ではおよそ“AVらしからぬ”極めて自然で写実的なホームドラマ的シーンが展開される。

碧しのの演技力はAV女優の中では突出するものがあり、性交シーンに於いては作品のシチュエーションに相応して性感反応を変化させて演じ分けるが、序章となるドラマ部分でも実に達者な演技を披露する。本作品レーベル「アキノリ」の代表でありAV監督のアキノリ氏は、自らが監督する同レーベル作品に彼女を起用した際、自身のツイッターに下記画像のようなコメントを寄せ、その演技力に舌を巻いている。この会食シーンでも、AV作品にありがちな演者の台詞回しの稚拙さやテンポの緩慢さ、生硬さが見られず、助演者の好演もあってやや長めに続く会食シーンを観賞に堪えうるものに仕立てている。AV男優は総じて演技に長けた人が多いが、本篇出演のイタリアン髙橋氏も例に漏れず、台詞の多い当該シーンを無難にこなしている。
課長・マツモト夫人役はAV作品で見かけることの多い新城きっか氏だろう。アキノリレーベル他作品でも台詞ありのエキストラ的出演が確認できるほか、碧しのとはこの後も共演を果たしており、ムーディーズ作品「登校拒否の教え子を心配して家庭訪問したら父親と生徒に媚薬調教された女教師」では、ひきこもり生徒宅を家庭訪問に訪れた碧しの分する教師を、夫と共謀して拉致監禁するサイコパスな母親役として登場する。本篇でも夫・マツモト役のイタリアン高橋氏と巧みな“壮年夫婦の掛け合い”を演じてみせる。

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淀みない会話が交錯するリアルな会食シーン

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