碧しの/U30 部下の嫁(1)  − 発端 −

「性欲盛りなU30歳の部下の嫁に手を出した俺」 2015/07/23発売 アキノリ(DVD/配信)

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冒頭部、オフィスのシーンから物語は始まる。デスクに向かいこちら側を向いて座する二名の男。手前の男が奥の男から火急案件の書類提出を求められる。

短い台詞の遣取りから、両者間の主従関係が明示され、「アオイ」と呼ばれた手前の男が当該の書類をデスク廻りに求めるが、自宅へ持ち帰りそのまま家に忘れたことを思い出す。

場面は変転し、個室トイレで便座に座りスマートフォンの画面を見つめる女が登場する。しばし画面を凝視したのち、下着を下ろした剥き出しの股間を手で弄る。

見つめる先の液晶画面は映らず音量もミュートされているが、彼女の反応からポルノ動画を視聴中であることが判る。満たされない自身の性的欲求を持て余し、自慰行為に耽る最中である。

スマートフォンに映し出される動画を見ながらの行為中、彼女が洩らす呟きからは激しい強淫願望があることが描出される。
やがて手淫では飽きたらず、トイレのサニタリーボックスに忍ばせたローター式ハンディマッサージャーを秘部にあてがい、さらなる享楽へとのめりこんでゆく。

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当該の書類が業務上不可欠なものであったことから、アオイは在宅の妻に届けてもらおうと電話連絡をする。

自慰に没頭中、ポルノ動画再生中のスマートフォンへ突然夫からの着信が入り、慌てて行為を中断して電話を受ける妻・シノ。

 

シノが内に秘める強い性的欲求の顕れとトイレ内に隠されたローターの存在が明示され、佳局に向けた2つの伏線が敷かれるシーンである。のちに夫の上司・マツモトに発見され、彼女が窮地に陥る(願望が実現する)要因となるこの「ローター式マッサージャー」は、夫の電話により急用が生じた彼女が、一時凌ぎにサニタリーボックスに隠しそのまま回収し忘れたものではなく、予てよりそこに常備していたもの、という説示的描写である。冒頭でシノが披露する唐突な自慰行為は、彼女の情欲を収める弥縫策として習慣化し日常的に行われていたものなのだろう。

ここで既に本作品のテーマ、“性欲盛りな嫁”という本則的フォルムが端的に呈示されるが、本作品の他篇(本作は4篇からなるオムニバス作品である)では、その設定に基づく描写がいささか曖昧である。3幕目となる「大槻ひびき」篇のみ“夫との営みを中断され、昂まる衝動が抑えられない妻”ゆえの貪婪さが描出されるが、他篇ではむしろ対象をつけねらう男の漲る欲心のみが詳述され、相手の“無自覚から発現した挑発行為”を受け激情的に性交渉へと至る展開で、対する“部下の嫁”は男の執拗かつ強引なアプローチに心ならずも屈してしまう_というものである。その後の性交渉場面では、嫁は早々に拒絶を止めて一転積極的に応じるようになることから、これを称して作品の趣意を満たしたということなのだろう。そのため本作品は、タイトルで謳われた主題に則した作品の独自性が全体的にはやや乏しく、この「碧しの篇」を除けば、他3篇は「強淫」→「和姦」として進展する凡常な「寝取りモノ」ストーリーの域を出ない。

 

課長・マツモト役を演じるのは、多くの出演作を持つAV男優、イタリアン高橋氏。

がっちりした体躯に180cmの身長は、女優としては長身の部類にはいる碧しのと対峙しても充分に威圧感がある。

対してどことなく覇気を欠く風貌、声が高く弱気な雰囲気が漂う夫役の演者も端役ながら適材である。やがて妻を寝取られる事になる上司役、イタリアン氏との絶妙な対比を生み出している。

※以後、当欄では作品全体を指す場合を「本作品」、「碧しの」篇以外の3つの各挿話については「_篇」「他篇」、「碧しの」篇を「本篇」と呼称する

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書類を手に夫の職場を訪れた妻・シノ。彼女の来訪に課長・マツモトがその若やかな容姿に見とれ、届いた「重要書類」をアオイから差し出されてもしばし“うわの空”になる。

シノはマツモトを見留めるなり笑顔で会釈し、マツモトは微笑してそれに返す。忘れ物の不注意を窘める夫婦のやりとりを自席から凝視するマツモト。

 

手前にアオイ夫婦を配して3者をフレーミングしたこの短いカットに、アオイ夫妻の蜜月と、シノに向けられたマツモトの秘めたる異心が重ねて表徴される。この場面の遣り取りからも判るように、シノ達の夫婦関係は極めて良好であり、夫に対する夫婦生活へのフラストレーションから強い性的渇欲を抱懐しているものの、“秘めごと”としての自慰シーンこそあれ、シノは本篇終盤でマツモトの手に堕ちるまで、その情欲を他者に向け表出させる場面はない。後続シーンでも夫を愛称で呼称したり、上司夫妻の自宅招待を自ら進んで提案する等、あたかも新婚夫婦のような夫への傾慕と円満ぶりを示すシーンが点在する。このシノの新妻のごとき振舞い・清淑さが、後半で彼女が陥る“卑陋極まる覚醒”との明示的なコントラストとして作用すべく、作品中盤までの其処此処で慎ましやかな花のように耀う。

そんな仲睦まじい2人の背後でマツモトはひとり埒外の存在である。そのマツモトが、当該のカットで夫妻に割り入るように画面中央に据えられ、目の前に立つ美貌の人妻に無遠慮な視線を投げている。後の背徳的展開を諷示する含意的場面である。彼女が退室すると、マツモトは思い出したように自身の妻から言付けられた、“互いの妻同士の趣味”に関する用件、シノへの要望をアオイに伝える。これによりマツモトの妻とシノとは、かねてより懇意な間柄であることが明らかにされる。
妻の言葉をアオイに伝える現時点のマツモトには、シノに対する奸計の企てはまだ存在しないだろう。妻がシノとコンタクトを欲している故の会食提案であり、またシノとの接触は妻の同伴が必然となる。マツモトにとってのシノは性的興味、徒し心の対象ではあるものの、シノの夫婦仲は順調で、乗じる隙も威迫する材料も現状では無い。のちの
訪問時にトイレに隠された「ローター式マッサージャー」の発見があるが、今のところローターの隠匿はマツモトの知るところではなく、彼の如何わしい好奇心(シノへの邪心)に依って齎される偶発的なものである。

 

マツモトに対する挨拶でのシノの所作、彼女の堅苦しさの抜けたフランクな様子からは、既に双方に面識があることを覗わせるが、のちの会食の席でマツモトに年齢を尋ねる場面があることから、(マツモトもその場でシノの年齢を知り、その若さに驚く)これまでの両者間に於けるコミュニケーション機会は、互いのプロフィールの断片にさえ言及しない、極めて希薄なものであったことが判る。遡れば、過去には今回同様の挨拶程度の顔合わせか、あるいはマツモト夫人との繋がりから、2人は何かの折に僅かな会遇機会があったと推測するのが妥当であろう。忘れ物を届けるシーンでシノが「“いつも”忘れ物を_」と常習化した夫の不注意を咎める台詞があることから、過去にも今回と同様のケースでオフィス訪問歴があったとも考えられる。一方のマツモトも、本篇佳境でシノに向ける囁き「ずっと奥さんと“(セックスを)したい”と思っていた_」には、彼の強い念望と長期におよぶ継続的執着、脈々とした邪心が感じられ、このオフィスでの邂逅からわずか数日後に設定された会食時の発言としてはいささか違和感があり、今回が初対面ではないことへの傍証となる。

さらにこの後、アオイ宅を訪問する際のマツモトの身なりに刮目すると、両家の心安い間柄と双方の居住地の距離的至近性が見てとれ、過去の面識機会の蓋然性を推量できる。

訪問時のマツモトは、くたびれたネルシャツとキルティングパンツ穿きという部屋着そのままのようなラフな格好で、帯同する妻もブラウスに薄手のカーディガンを羽織り、デニムパンツという軽装である。マツモトの服装に至っては、ややもすれば電車移動すら憚られるような粗放なものであり、両家の住居が徒歩で往来できるような至近距離である可能性を示唆する。妻同士は、互いに料理のレシピを伝授しあう親しい関係であることが中盤で語られることから、過去の私邸への訪問時にマツモトとの遭遇の場があったとも考えられる。

いずれにせよ、現時点でシノにとってのマツモトは、挨拶時に彼に向けた深意のない笑顔からも判るとおり、面識はあるものの思慕や欲望の対象にはなっておらず、単なる「夫の上司、課長」という存在である。

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夫の職場を訪れ、挨拶を交わすシノと夫の上司マツモト。マツモトは夫と会話中のシノを窃視する

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作品の細部に至るまで様々な配慮が感じられる「アキノリ」レーベルの作品であるが、本篇に於いてはいくつか気になる些末事がある。このシーンで敢えて難点を挙げるとすれば、シノの会社訪問時の服装だろう。まるで隣家から駆けつけたような軽装で夫の勤務先へ現れる姿には強い違和感を禁じ得ない。直前のトイレ内シーンと同じ衣裳で登場してくることに関しては、夫の職場訪問とはいえ火急の事態ゆえの不行儀として致し方ないとしても、女性の身嗜み、外出時の式例として上着とショルダーバッグくらいは携行させて欲しいものである。
(実際には、会社規模にも依るがオフィスの一部署フロア内まで部外者が入室すること自体、奇異なものなのかもしれないがそこは黙従する)

 

しかしながら、後述する会食シーンの服装にも含め、本篇でのTPOを弁えた的確な女優の衣裳選択は秀抜である。演者の役どころも顧みず、衣裳を視聴者に向けた煽動装置とすることに固執するあまり、挑発的で露出過多なものばかりを択むAV作品(特にドラマ仕立ての作品や企画作品のワンシチュエーション物に顕著である)にあって、本篇で「碧しの」が演じる「二十代後半の若妻」のリアルな形姿造出は出色といえるだろう。

AVでは女優が醸す“色香”を簡捷に誇張する手段として “およそ公の場にそぐわぬ不謹慎な身なり”(作品の物語内では、それが常に周囲から承認されてしまうのだが)で登場することが定石となりがちだ。シリアスなドラマ仕立ての作品であっても、現実性を度外視したセクシュアルな見かけを安易に採用する作品は枚挙に暇がない。以下に挙げたのはドラマ形AV作品の一場面である。上段一列は家庭教師が教え子宅を訪れるシーン、下段は日常の家事として主婦が掃除をするシーンであるが、家庭教師はソファに座るとスカート奥が露わになるほどのタイトミニ、一方の主婦はボディコンシャス風のスリット入りミニワンピースという格好で、どちらも現今に於ける自身の職分(「授業に臨む家庭教師」と「家事に勤しむ主婦」)から乖離した、非現実的で場にそぐわぬ有り様である。(いずれも、女側に手前の“見る男”を誘惑せんとする意図は持たない設定である)下段「掃除中の主婦」に至ってはもはや掃除機を操作する際の動態ではない。シチュエーションを無視した過度な脚や胸元の露出、身体の線をことさら強調する服装は、観るものを失望させ、却って作品に対する興味を減衰させるものである。こうした不適当な衣装選定が、監督あるいはスタイリストに委ねられているのかは知る由もないが、こうした因習的ともいえる審美基準は、視聴者が鼻白むばかりか、女優演じる個々のキャラクターの品格さえも貶める極めて残念な愚行である。

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AV作品に登場する露出過剰な衣装 大胆すぎる衣装で日常風景に登場する女優には違和感がある