ラウラ・アントネッリ/青い体験
「 青い体験/続・青い体験」 2014/10/10 発売 KADOKAWA(ブルーレイ/DVD)
2014年、BS放送の有料映画チャンネルに於いて「イタリアン・エロス特集」と冠して、1970年代のイタリア官能作品が連続的にオンエアされ、タイトルのみ知る古典的作品を鑑賞する機会を得た。ラインナップは「青い体験」「続・青い体験」「スキャンダル」「課外授業」といった作品群である。同年秋、これらの作品が放映チャンネルの系列メーカーより「HDマスター」を謳いブルーレイ、DVDリリースとなったが(「課外授業」は別メーカーより既発売済)、「高画質化」をことさら強調しての放映は、ソフト化前提で取得した素材流用によるのものだろうか。
その中でも「青い体験」2作は、作品ファンからリリースが渇望されていた作品のようである。同作品が1994年のVHS版発売以来、長らく映像ソフト化が実現しなかったことにも起因するようだが、大手ECサイトの商品レビュー欄には、今回のリリースへの称賛コメントが連なり、本作品の人気の程が明確に伺える。投稿コメントには、80年代から繰り返しテレビ放映を視聴した世代からの熱意ある投稿が目立つ。上述の作品群は、当初のテレビ放映時刻がいずれも午後9時台の洋画劇場枠であったようで、ソフトな内容とはいえ扇情的なシーンが連続するこれらの作品が、晩食後間もないプライムタイムに平然と流されていたことに隔世の感を禁じ得ない。
「青い体験」(1973)は、男所帯に突如現れた美人家政婦に想いを寄せる少年の一途な思慕と、やがて彼の中に生起する激しい嫉妬心によって齎される歪んだ恋愛模様を描く作品である。己の性衝動への矛先として、また父親と家政婦との再婚話を阻碍せんと、様々な手段で家政婦を虐げ翻弄する。再婚にあたり少年の理解を得んとする彼女は、少年の理不尽な要求に渋々ながらも応じざるを得なくなってゆく・・ 少年と彼の級友が見守る中でのストリップ強要、衣服をはだけ露わな格好のままでの服事、親族参集の会食中、食卓下で行われる下着の収奪等、恥辱行為の数々を少年に言われるままに励行していく。
主演のラウラ・アントネッリは出演作の多くで惜しげもなく全裸を披露しているが、本作ではブラウスからのぞく豊満な胸元や下着のささやかな露出、シースルー越しのシルエット姿など極めて控えめなものに留まっている。それでも本作が充分に官能的であるのは、彼女の成熟した妖艶さに加え、監督であるサルヴァトーレ・サンペリの演出手腕に依るところが大きいのだろう。
上述の作品群の中、「スキャンダル」(1976年)は「青い体験」と同様サンペリ監督による作品であるが、ここには昨今の和製AVの典拠であるかのようなシーンが数多く登場する。営業中店舗に於ける接客カウンター越しでの、声を押し殺した強淫場面、電話中の婦人に対する背後からの執拗な愛撫、加えて本作の主幹をなす主従逆転による背徳劇がある。これらのシチュエーションは物語のモチーフとして、幾多のAV作品に見いだすことが出来るだろう。
この作品に於いても主演女優の全裸シーンはさほど多くはない。「青い体験」と比較すれば描写は直接的だが、傲慢な夫人が使用人の性技巧に溺れ、次第に服従させられていく過程の描写が卓抜であり、あからさまなヌードよりはるかに淫猥である。
「青い体験」のヒットを受けたものか、次年に同監督による「続・青い体験」が製作されている。あたかも本作の後日談を想起させるような放題に反し、主演者2人は同じで作風も似るものの、こちらは兄嫁と少年と設定を変えた、全く異なる設定の物語である。