森永奈緒美/宇宙刑事アニー
サーチエンジンの画像検索で抽出表示されるサムネイル群に混じる、検索語句からは全く関連性が感じられない一点の画像。そこから大きく脇道に逸れ、本来の情報収集の目的をよそに延々とネット上を彷徨する事象は、時として唐突に起こるものである。「宇宙刑事アニー」を知るに至ったのも、そうした意図せぬ画像との遭逢によるものであった。画像のリンク先で得られる語句から改めて検索を掛けると、膨大な量におよぶ彼女の格闘シーン画像が検出され、検索語の関連ワードとして当該画像から想像に容易い副次的フレーズがドロップダウンされていく。古い作品であり、今まで視聴機会も無かったが、これを発端として近年CSチャンネルでの放送を機に「アニー」の登場する特撮作品「宇宙刑事シャイダー」テレビドラマ版全49話、劇場版2作を初視聴した。敵陣営の見掛けやカタカナ2文字を反復するだけの軽易な登場怪物(“不思議獣”と呼称)の名称、玩具メーカーとのタイアップを推察させる武器の数々など、番組の主要たる視聴ターゲットを低年齢層男児としたものと思われたが、ウィキペディアによれば制作者側の弁としてより高い年齢層を取り込む意図があったとの述懐(「大学生くらいの特撮マニアやおたく」と記述)があり、「アニー」のコケティッシュなキャラクターはそこから発意されたものとも推察される。青年層をもうひとつの視聴対象とすることを明示したことで、製作スタッフによる彼女への奸計も勘ぐらずにはいられない。ミニスカート姿での派手なアクションはもとより、露骨なローアングルや頻発する格闘中の前転運動など、あからさまなアンダースコート露出を目途とした演出が随所にみられる。リアルタイムで視聴した子供には少なからずセンセーショナルな体験となったに違いない。
邪曲な視点を外してみれば、テレビ画面狭しと躍動する彼女の勇姿にひたすら瞠目させられる。アニー演じる森永奈緒美は、撮影当時アクション俳優育成に長ける芸能事務所JAC(ジャパンアクションクラブ)所属だっただけあって、殺陣のキレ、運動スピードは圧巻である。劇中のポジションとしては主人公シャイダーが登場するまでの繋ぎの格闘、あるいはシャイダーのバディとして敵地への潜入捜査や調査活動を担う“前座”的役割であるものの、主役の演者がアクションを不得手としたこともあって、シャイダー変身(本作では「焼結」と呼称)までの格闘場面はそこそこ尺もあり彼女の独壇場である。高い戦闘能力を持ち戦闘員クラスはやすやすと手玉に取る一方、簡単に罠に落ち敵の術中に陥まるあたりも視聴者心を擽る所以であろう。彼女が単身活躍するシーンでは、本人歌唱による「アニーにおまかせ」なる劇中歌まで登場する。(K)
「宇宙刑事シャイダー」 1984-1985 放送
他 劇場版作品より抜粋
テレビ朝日/東映 (ブルーレイ/DVD/配信)
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