碧しの/U30 部下の嫁(6) − 煽惑 −
「性欲盛りなU30歳の部下の嫁に手を出した俺」 2015/07/23発売 アキノリ(DVD/配信)
マツモトがトイレから戻ると、泥酔したアオイはテーブルにうつ伏しすっかり寝入ってしまっている。
シノはそんな夫の非礼を詫びるが、マツモトは意にも介さず早々に自身にとっての本題に入るべく行動を起こす。ポケットから徐にローターを取り出すとシノの前に差し出しその反応を覗う。
突然のローター発覚に激しく動揺するシノに対し、マツモトは口調こそ穏やかながらもその使途を執拗に詰め寄る。それまでの穏和な雰囲気から一転、物語の佳局として場の様相が大きく変局するシークエンスである。碧しのの見せる、思考停止状態から狼狽へと移ろう迫真演技が素晴らしい。突然の密事の露呈に視線も定まらず場を取り繕おうと呻吟するが、二の句は継げずマツモトの挙動を怯えたように覗う。
シノの内に秘めた淫慾を見透かし、マツモトは強引に迫る
マツモトは容赦なくシノを抱き寄せ、自身の欲望を遂行せんと襲いかかる。
ルーターで執拗に局所を弄ばれるとシノは抵抗空しく陥落させらてしまい、果ては貪るようにお互いを求め合う。
先述したように、ここまでのストーリー展開、女優の着用する衣裳から出演俳優陣の振舞い等に至るまで、作品を形成する構成要素は、AVが陥りがちな歪んだ歪曲や誇張もなくほぼ申し分のないものであった。しかし、本項序盤で述べた“いくつかの難点”のひとつは、作品の極点であるべき肝心の性交シーンにある。ベッドインした後の絡みの場面に転じてからは総じてカメラワークが単調で、興趣の得られない平板さに視聴していて少なからぬ違和感を覚えるほどである。
本項(4)で述べたようにふたりの性交渉は、それまでストーリーの舞台であったスタジオ見取り図の「ワンルームB」から、シノの自発的な誘導により隣室の「ワンルームA」へ移動して行われる。ベッドの位置は食卓で居眠りする夫を性交渉するふたりと同一フレームに収める都合で本作品用に決められたものだろう。“夫が居眠る傍らで上司と性交におよぶ妻”という背徳的描写として本篇中で表顕されている。ベッドは「ワンルームB」との境である壁際に置かれていることから、壁方向からのアングル取得は叶わぬが、それ以外の3方向(俳優の頭側、足側、壁に面していない側の横方向)からは、問題なく撮影可能であるにも拘わらず、本篇では横方向からの画のみ、それもカメラを引いた全身ショットの構図すら皆無である。本篇ではベッドに横たわるふたりのミドルショットとアップの交錯が繰り返される。固定カメラ撮影ではないため、性交体位の変更によって多少の仰俯角への移動は行われるが、男女優の全身を収めたロングショットは遂に登場することなく終焉を迎える。スタジオ見取り図でみる限り「ワンルームA」は充分な広さがあり、本作他篇ではそれなりに引き画も収められている。本篇の見せ場が何故このような窮屈極まりないフレーミングによる撮影となってしまったのかが疑問であり、甚だ残念である。